今月はシアタージャパンの専属作曲家であり、大澤音楽工房代表兼作家でもある、作曲家・大澤紀彰さんをお迎えしてシアタージャパンのことや曲作りのことなど、作曲家としての視点から色々お話を伺ってみようと思います。(最下部にバックナンバー有り)

2003年9月号
Vol.2


つくつく こんにちは。しばらくお会いしていない気がするのですが、お元気そうですね。今日はよろしくお願い致します。早速お話を伺いたいのですが、まず、シアタージャパン旗揚げ公演となったBlue初演に関わることになったきっかけから教えてください。

大澤 三浦氏とは、私が学生の時に師匠を通じて知り合いました。そして、市民劇団や市民ミュージカルなど三浦氏演出作品の作曲をするようになったんです。その流れというか…(しばし沈黙)、う〜ん、何だろうねぇ?(笑)。「今度こういう作品をやるんだけど、やらないか」という感じで話が来たと思います。

つくつく そこから、シアタージャパン(以下 TJ)と大澤音楽のコンビネーションがスタートしたわけですねぇ(しみじみ)。TJ作品の音楽の中で、思い入れがある曲などはありますか?

大澤 どの曲にも思い入れがあるし、一作品につき平均でも数十曲あるからTJに提供した曲だけでもたった3年と言う月日にも関わらず裕に数百曲ある為、実のところ作曲家自身が全曲把握しきれていないというのもあるけど(笑)強いてあげるなら、TJの処女作《Blue Plate Special》の「Quality of Life」。三浦氏とは学生時代に師匠からの紹介にて知り合い、気に入って頂き、数々の作品で関わって来ました。その流れの中で演出家の好みがわかって来た頃に依頼されたのが《Blue Plate Special》なんです。この作品の作曲時、私は学生で卒業作品を製作中だった身、結局この作品がそのまま卒業作品にしたんだったかな(笑)。やっぱり《Blue Plate Special》の「Quality of Life」ですね。

つくつく みんな、特に1期生はそう言いますよね。大澤音楽はどれもみんな捨てがたいけど、やっぱり「Quality of Life」が好きって。

大澤 う〜ん、やっぱりね、あれが一番最初だし、なんか泣けるんだよね。

つくつく それはお話の中でってことですか?

大澤 もちろん。なんだか分かんないけど、なぜか泣けちゃうんですよ。
お話の中でというか、劇音楽とは基本的には音楽だけでは成立しないんですよね。TJ作品はミュージカルということでエンターテイメント的に音楽が立つ箇所は確かにあるけど、あくまでも添え物でしかない。でも、普段街で流れている音楽が普通にあるように、無いとしっくり来なかったりする訳で、音楽を入れることによってお客様を物語の世界に引き込んだり、感動に導くことが出来たり、役者が感情移入しやすくなったりする。その微妙なクスグリが結構重要な役割を占めていて作り手として面白くたまらない所なんです。

つくつく でも、その微妙なところがきっと難しいんでしょうね。

大澤 NEWSやドキュメント番組、戦争報道等の音楽製作は難しいものはないと言われていて、完全な作り話なら極端な話どうにでも作れるけど、《Blue Plate Special》の病院、《HAND in HAND》の学校とか、フィクションではあるものの現実とダブる点があって、かつイジメ、病気、死、愛や友情、容易く作れる題材ではないと思う。こういった作品は、もしその立場にある方が見たらどう思うか、この曲で大丈夫なのだろうか、例え癒されなくても嫌気にならないだろうか、かなり気を使います。この曲もそんな葛藤の中、本番ギリギリで出来あがった曲なんです。いつだってギリギリだろうって?!(笑)。初演の稽古は本当に壮絶な印象を受けました。何しろ作ってる側が泣けるんだからビックリ!もちろん劇場で泣いているお客様は大勢いらっしゃって、それを観るとこれでよかったんだ!とホッとします。これから日本のミュージカルを変える!というかねてからの野望?!に一歩近付いたぞというのと、物語上の岡田先生の病院改革とを勝手にダブらせ、いい仕事をさせて頂いているというこの贅沢な環境に自分も思わずうるんでしまったのでした・・・なぁんてね(笑)本当はそれだけでなく泣かせるテクニックで書かれた曲だったりもするので「ヤッタネ!」っていう気持ちもあるかも(笑)。

つくつく なるほど。それじゃあ、TJ作品としてはいかがですか?

大澤 うーん、《オーカッサンとニコレット》は、音楽主体の芝居だったから面白かったです。全体が繋がっていて、音楽で芝居が動いていくような感じ。40曲以上あって相当大変だったけど、その分かなりやりがいがありました。

つくつく 《オーカッサンとニコレット》は、その名の通りまさに「歌物語」でしたよね。いつも絶えずMが流れているような、そんな雰囲気でしたけど、曲を作る時心掛けていることなどありますか?

大澤 まずは、体調を崩さないこと。これは重要!役者もそうだよね。

つくつく 感電しないようにとか(笑)?(今年の5月、大澤氏はパソコンに感電して、そんな中執念で(?)曲を上げてくれました)

大澤 そうそう(笑)。いや、でも本当に食べ物にも気を使います。それから、作曲するにあたり、物語の内容について時代、場所、環境、食べ物!、下らない雑学等、脚本とは全く関係ないところまで自分なりに調べ尽くし、あたかもその世界に生きる住人になること、もちろん音楽的にもその土地の民族音楽、時にはどう伝わったかというルーツも調べ、流行歌、民謡等もリサーチして材料にする。歌や心情を表す箇所等は実際その役になりきる。また、映像の場合は芝居と音楽は同時に作られていくことは少ないけど、舞台は「稽古を見て、音楽を付けて」を繰り返し、互いに影響を受けリンクして作っていくでしょ?ココが出来合いの作品とは違うオリジナルのよさでもあると思うんだけど。もしかすると、自分は作曲家という立場だけど、毎回「作曲家」という役を演じている役者なのかもしれないなあ、と。自分には芝居なんて難しくてとても出来ないけどね・・・そういったここでは言い切れない程の「世間からは無駄なんじゃない?」と思われそうな色々な素材にインスパイアされることによって、違和感がなく作品に溶け込むもの、よりリアルなものが作曲出来ると思う。

つくつく そうそう、その国やその時代のこと、いつもすごい調べてますよね。

大澤 うーん、そうしないと不安になるんだよね。その時代や設定に合わないものだと、観ている人には絶対違和感があるし、「この時代にこんな曲ないよ」なんていうのを、観てる人は観てるんです。そんな風に言われたくないですから、どうでもいいことでも雑学として調べて使えるようなら使う。まぁ逆に言えば、そういう風に色々な情報を知ることで曲が浮かんでくるって部分もあるかもしれないですね。

つくつく さすがプロですね。あの素晴らしい大澤音楽は、緻密な調査の上に成り立っているんですね(笑)。

大澤 芝居あっての音楽ということで時間や場所、心情の変化があり、ただ各曲をおのおの書けば良いという訳にはいかなくて、一作品のなかの数十曲、たまには他のTJ作品から引用があったりと微妙に繋がっているんだよね。TJマニアにしかわからないであろう作曲の遊びはところどころにちりばめられている、ちょろっと気にして頂けると観劇の面白さも増すかも。

つくつく ここで少しだけですが、大澤音楽を皆様にプレゼント!これまでのお話の中で出てきた《Blue Plate Special》の「Quality of Life」と《オーカッサンとニコレット》の「M43」の一部をお聞きください。再生するには最新のフラッシュプレーヤーが必要です。(お持ちでない方はここでダウンロード出来ます)



聴きたいトラックを選んで再生ボタンを押してください。
データを読み込むのに少々時間がかかります。
Track 1
Track 2
  Blue Plate Special より 「Quality Of Life」
  オーカッサンとニコレット より 「M42」



つくつく
 そう言えば今月は静岡でHANDの公演がありますけれども、HANDの曲はどうですか?


大澤 HANDは時代や背景がとてもハッキリしていて、まぁ現代物ですし、観ている人にとっても、まさに「今」のお話だから、実は曲作りは結構大変だったんですよ。「今」流行っているジャンルの曲、つまりHANDの時代である「現代」に合わせたジャンル、しかも若者に流行っているジャンルなんかを取り入れて。

つくつく 個人的には、「All That Drug」、結構好きなんですよ。私も現代っ子なので(笑)、ああいうノリが好きだったりするのですが、大澤さんがああいう曲を書くのはちょっと意外というか、それまで《オーカッサンとニコレット》や《夢がある限り》など続いたので、クラシック系のイメージが強くて、こんな曲も書くんだと素直に感動した記憶があります(笑)。

大澤 HANDの楽曲は今までの作品とはキャラクターが違う曲も含まれるので意外と思われがちなんだけど、意外と好きなジャンルだったりするんですよ。Dの名曲を先日カバーしたカリスマ日本人ロッカーのライブにも行ったりするし、日本ならではのいわゆる歌謡曲も好きだからね。。。通っていた学校も、どちらかというとポピュラー系だったし。でも確かに時代物が続いたからね。実は私も「All That Drug」好きなんです。現代っ子?(笑)

つくつく ・・・・・・(笑)
HANDといえば、「ゲーム」もすごい曲ですよね。曲自体も私は生涯5本の指に入る程好きなんですが、何がすごいって、やっぱりあのハモリですよね。


大澤 そうかも(笑)

つくつく 最初に楽譜をもらって音を取った時、思わず笑ってしまいました。何じゃこのハモリ?曲じゃないよーって(笑)三浦氏や、歌唱指導の藤原氏も、凄まじいハモリに「おいおい」って苦笑いでした。パートごとに必死に稽古した思い出があります。

大澤 ははは(笑)。あれは歌だと難しいハモリですけど、実は楽器で出すと簡単というか、いいハモリなんですよ(笑)

つくつく 作ってる段階から難しいと思ってたんですか?

大澤 ハイ・・・(笑)。これは無理かもしれないけど、一応ハモリを書いておこうって(笑)
でも冗談はさておき、簡単に書くと演奏者も飽きるんですよね。難しいと毎回新鮮な気持ちで歌えるでしょ?

つくつく そうですねぇ。難しくても、楽譜に音符があると絶対やってやるって思いますね。「ゲーム」も最初は、「無理だ」って言われてましたけど、楽譜には3声で書いてあったから意地でもやってやろうと思えたのかも。最初からユニゾンなのとは違うかもしれませんね。

大澤 ああ、本当にうまい演奏者もそう言いますね。下手な人は難しいから弾けない、歌えないって文句言うんですけど(笑)、本当にうまい人はどんなに難しくても、難しければ難しいだけやってやろうって言います。

つくつく それって演奏者と作曲者がお互いを高めあってるってことですよね?このハモリが出来たんだから、次はもっと上を、って。

大澤 そうですね。まぁ、「ゲーム」がハモれたら、どこ行ってもどんな音でもとれるはず。だからどこ行っても大丈夫かも!?(笑)。それくらい「ゲーム」は難しいと思いますよ。でもシアタージャパンでやる限り、他の所と同じ事やっても面白くないし、実験的に他の所がやってないことなんかもどんどんやっていけたら、とは思っています。

つくつく このハモリが聴きたい方は是非、9/27・28の公演を観にいらしてください(笑)。
TJの歌唱能力は、そういう意味ではすごいんでしょうね。藤原氏も以前おっしゃってましたが。


大澤 そうそう、すごい。特に最近すごいよね。この間、HANDの団内オーディションの時にも思ったんだけど、半年とか1年前より格段にうまくなってる。もちろん一人一人がね。まぁ、これだけ常日頃から本番本番の毎日だから、必然的に上手くなるのかもしれないけど、びっくりしました。以前から合唱形式での歌唱、つまり皆で歌うということに関してはレベルは高かったと思うけど、一人一人のレベルが上がったというのは凄いことじゃないかと。みんな、鍛えられてますねー(笑)。

つくつく 絶対的に、レッスンがレッスンで終わることがないのがTJの特徴ですかね(笑)。いつも何かやってるし。

大澤 そう、やり過ぎなんじゃないの?っていう位ね(笑)。でも、それがあってこその成長なんだろうな。

つくつく みんながみんな、ソリストになるだけの力が身につけばいいですね。みんながみんなっていうのは、おそらくどこの劇団でもないでしょうし。

大澤 そうですね。もちろん技術を身につけることは重要だけど、ミュージカルは「役で歌う」ということがオペラや合唱とは違う点だから、だからこそミュージカルって面白いというか、奥が深いんじゃないかとも思うんです。だから役で歌えるっていうのも重要だと思うんですよね。

つくつく そうですね。同じ役をやっても演者が違えば違いますしね。

大澤 ミュージカルといっても、クラシック寄りだったりポップス寄りだったり、色々ですからね。

つくつく 今はアイドル主役のミニコンサートまでついたミュージカルも作られてますしね(笑)。

大澤 そうなんです。だからこそシアタージャパンらしさというのが大事だと思うんです。TJの作品が他の所と比べて凄いと思うのは、どんな作品でもすごく「生身っぽい」ということだと私は思うんです。つまり、まるで本当にそこで生きて生活しているような。実在の人物なんじゃないかと錯覚するような。リアルなんです。

つくつく こういう人いるいる!というよりは、むしろこの人はホントにそういう人なんじゃないか?ってことですよね?

大澤 そう。登場人物がみんな「生きて」るんだよね。作られていないというか。

つくつく 私は、まるで役者が、つまり登場人物が衣裳や道具や音楽、果ては台詞や歌やダンスに「動かされてる」と思ってしまうようなお芝居を観たことがありますが・・・

大澤 そうなんですよ。まぁTJの場合は、自分が関わっているから贔屓目に見ている部分があるかもしれないけど、それでもやっぱりすごいことやってるなぁっていつも思いますよ。ちょっと話が違うかもしれないけど、《HAND in HAND》の「ざけんなよ」とか、よくあんなに激しく踊りながら、あそこまで歌えるなぁと思います。それもまたシアタージャパンらしさの一つかなぁ、と。

つくつく (ボソっと)いや、オオラスの「HAND in HAND」の方が大変です。歌い終わったらグッタリ・フラフラですよー。

大澤 そうなの(笑)?

つくつく そうです(キッパリ)。でもいい曲です(キッパリ)。

大澤 ハハハハハ(笑)。

つくつく でもTJらしさや自分らしさって大切かもしれませんね。では今後のシアタージャパンに期待することは何ですか?

大澤 う〜ん、今まで通りに。

つくつく 今まで通りに?

大澤 そう。TJのカラーって絶対にあるから、それを失くさないで欲しいです。TJにしか出せないもの、出来ないもの、色々あると思うし。とにかく今まで通りにTJらしく活動して欲しいです。

つくつく これからやってみたいこととか、ありますか?

大澤 本公演ではまだ和物をやったことがないので、是非和物をやってみたいですね。

つくつく 和物といいますと、ユタや鬼は外みたいな?

大澤 いや、時代劇みたいなのをやりたい。今、座等市でやってるじゃない?あれ観て、あ〜先越された〜って思ったんだけど、時代劇をミュージカルでやってみたい。

つくつく へ〜、なんだかミスマッチのようだけど面白そうですね!あまり例がないだけあって、やりがいもあるかもしれないですよね。では最後にこれをご覧になってる皆様へ何か一言。

大澤 ・・・今後も応援してください。・・・・・じゃぁ、普通すぎて面白くないよねぇ(笑)。面白い方がいいんだよねぇ(笑)?

つくつく いや、別に面白くなくても構いませんけど(笑)。

大澤 困った・・・
・・・他と同じ事をやっていてはツマラン!しかし他では決してみられないカラーと可能性がこの劇団作品には存在するのが毎度ひしひしと感じる。作っている側もこれから何が飛び出すかわからないビックリ箱のようで非常に楽しいです。日本からの発信だから意味があるもの、TJの舞台でしか味わえないものを今後も提供 していきますので、是非是非御贔屓の程宜しくお願い申し上げ仕りまする!!という感じで、どう(笑)?

つくつく ハハハ(笑)。でも今日は本当にありがとうございました。
今月は静岡で大澤音楽が吹き荒れる予定ですが、今後も益々大澤音楽をたくさんの人に聞いて頂けるといいですね!期待しています。




大澤紀彰 〈Noriaki Osawa〉

1977年東京生まれ、血液型不明。食物好き、何でも良く食べる。幼少時代に子供劇場に入っており、そこで舞台の味を知ってしまう。

86年より金管バンドにてTp.を演奏。87年吹奏楽部入部Tuba担当(その後、中学・高校とTuba担当)、現在も社会人楽団、母校吹奏楽部で時々演奏。87年よりElectoneの個人レッスンにつく(98年まで。植竹豊文氏他に師事)。

96年、東京コンセルヴァトアール尚美(現:東京ミュージック&メディアア−ツ尚美)、音楽総合学科専門コース作曲学科商業音楽専攻に入学。作曲を川崎絵都夫氏に師事。98年3月卒。

98年、東京ミュージック&メディアアーツ尚美(旧:東京コンセルヴァトア−ル尚美)、音楽芸術表現コース作曲学科商業音楽専攻に入学、2000年3月卒。

在学中より、恩師川崎絵都夫氏のお手伝いや、恩師より演出家の三浦克也氏を紹介され主に舞台劇音楽(ミュージカル等)をメインとし活動。他、吹奏楽、TV、イベント、ビデオ等への楽曲提供。また、某出版社での楽譜浄書や、通信カラオケデータ制作、CD制作等も手掛ける。現在、大澤音楽工房代表兼作家としてフリー作編曲家、ミュージカル劇団Theater Japan専属作曲家。

Official Website  http://www.nonon.org/



(Interviewer … つくつく)

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2003.8月号